当社、編集部が独自に選んだ主要ニュース(出展:日本経済新聞)は、「①2022年路線価」「②円安で不動産投資活況」「③債券価値、世界で2300兆円減」です。

①2022年路線価

国税庁が7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる2022年分の路線価を発表しました。本年1月1日時点、全国約32万地点の標準宅地は平均で前年に比べて0.5%上昇しました。新型コロナの感染拡大の影響が徐々に緩和され、人流の増加などの期待が高まりました。その結果、観光地や繁華街などでプラスに転じたり、下げ幅が縮小する地点が多くなりました。

都道府県庁所在地の最高路線価が上昇したのは横浜・名古屋・京都など15都市でした。前年より7都市増加し、一方、下落した都市は前年より6都市少ない16都市になりました。21年分の下落率トップの奈良市は前年比1.4%マイナスでしたが、下落幅は11.1ポイント縮小しました。全国トップの路線価は37年連続で東京都中央区銀座5の文具店「鳩居堂」前となりました。

今回の路線価はオミクロン型が猛威を振るった「第6波」前の1月1日時点の価格となります。3月に感染対策の行動制限が解除されて以降、国内旅行者などの客足が徐々に戻りつつありました。しかし、7月に入り「第7波」となり、今後の地価への影響を注視していく必要があると思います。


②円安で不動産投資活況

国内の不動産市場に投資マネーが流れ込んでいます。7月7日に1次入札の締め切りを迎えた政府保有の大型複合ビル「大手町プレイス」の取引には国内外合わせて10社強が参加しました。1次の段階では金額の提示は不要ですが、立地や周辺の賃料相場などから3000億円規模が見込まれます。

国内完成済みビルの過去最高取引額は21年、東京・汐留の「電通本社ビル」で推定3000億円になります。今回はこれを超える可能性があり、売り手側は各候補を審査、9月に最終入札を実施、購入者を決定します。買い手候補で目立つのは海外投資家で、米ゴールドマン、米ブラックストーンなどが参加しています。日本国内は超低金利で、東京の不動産は借り入れコストを考慮した投資利回りがシンガポールや香港より高く、併せて足元では円安が進行し、海外投資家は従来に比べて割安に不動産が購入できる環境になっています。

もっとも、足元では海外の利上げの影響で、日本でも金利が上昇するとの懸念が急速に高まっています。銀行やリース会社向けのあるアンケート調査、今後1年間の最大の懸念材料は「金利上昇」が3割強となりました。将来の利払い負担が増えても、その分、賃料を引き上げれば収益は維持できますが、現状では難しくなっています。背景としては、リモートワークの定着や大型ビルの完成が相次ぎ、東京都心での空室が増加しているからです。他の投資商品と比べた不動産の優位性が薄れれば市況は崩れかねず、先行きには危うさもあることを忘れてはなりません。


③債券価値、世界で2300兆円減

世界の債券価値が急減しています。今年1~6月の減少額は17兆ドル(約2300兆円)、1990年以降で最大となりました。各国の金融引き締めで債券利回りが急上昇し、利回りと反対に動く債券価格は急落しました。債券市場が収縮し、債務に依存してきた世界経済が曲がり角に差し掛かったといえます。

米バンク・オブ・アメリカによると、国債に限れば1865年以降で最大の下落ペースとのことです。既に、債券を大量保有する金融機関や運用会社に損失が発生しており、投資意欲が大幅に低下してしています。銀行は利上げに伴って融資する金利を上げているものの、保有債券で損失処理を迫られ運用で苦戦しています。

国債では財政に懸念を抱える南欧諸国の国債利回りが急上昇しています。イタリア政府が6月末に発行した10年債の落札利回りは3.47%と8年ぶりの高水準になりました。今後も、国債価格の下落が続けば、南欧や新興国の財政が行き詰まるリスクが高まる可能性があります。

国際金融協会(IIF)によると、新興国を含めた世界の債務残高は300兆ドルを突破し、この20年余りで約3.5倍になりました。同期間のGDPの伸び(2.5倍)を上回ります。世界の債券利回りが平均1%上昇すれば、借り換えなどを通じ、長期には1.25兆ドルの利払い負担の増加となります。低金利の環境下で債務に頼って成長を底上げしてきましたが、その前提は大きく揺らいできています。

今後、世界各国の中央銀行がどのような金融政策を実施するのか。その内容が債券価値のカギを握ります。



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