なぜ老後の住み替えが急増しているのか
親や先祖から受け継いだ土地や建物を子どもに受け渡すという流れは日本に限らず一般的なものでした。しかし、高度経済成長後、日本では都市で生活する人口が急増し、核家族化が進んだことで、親とは別の家を建てる子どもが増えています。
親は地方の実家で、子ども家族は都会で暮らすという割合が大きくなるにつれ、老後の生活の住まいをどうするかが悩みの種となっているのです。
20年前、30年前に建てられた戸建てのマイホームは老朽化とともにリフォームが必要だったり、子どもたちが独立をして夫婦で暮らすにはスペースが広すぎたり、段差が多い、庭の手入れが必要など、高齢になってから暮らすにはさまざまな問題が生じてきます。
また、郊外や田舎の団地であれば、アクセスが悪く病院や買い物が不便になっているエリアも少なくありません。
かといって、こうした問題を解決するのに子どもが実家に帰ってくる例は少ないため、快適な老後の暮らしには年を取っても暮らしやすい場所や住まいへの引っ越しが選択肢にあがります。
マンションと戸建てのメリット・デメリット
住み替えで一番悩むのが、マンションにするか戸建てにするかです。それぞれメリット、デメリットがあるため整理していきましょう。
マンションのメリット
・段差が少なくバリアフリー
・玄関前や庭の掃除の必要がない
・戸締まりしやすい
・セキュリティが充実している
・相続で売却や譲渡しやすい
マンションのデメリット
・管理費や修繕積立金、駐車場代などの固定費が発生する
・隣室の音が気になる場合がある
・植物やペットなどに制約がある
戸建てのメリット
・周囲の生活音が気にならない
・自由に暮らせる
・庭やプランター、ペットを育てやすい、飼いやすい、
・管理費が不要
・土地を子どもに相続できる
戸建てのデメリット
・段差が多くバリアフリー改修が必要になる
・2階建ての場合、階段の上り下りが大変
・庭の手入れや玄関前の掃除が必要になる
・セキュリティが心配
・老朽化とともに自分たちで修繕が必要になる
・相続した子どもが住まない場合、空き家の管理が必要になる
・土地や建物によって子どもに高額の相続税が課される
このように、マンションと戸建てには大きな特徴があります。
マイホームを担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」とは
老後資金と住まいをどうするか。「リバースモーゲージ」はこれまでにない新しい方法で住まいを活用できるため注目度が高まっています。
戸建てのマイホームはあるけれど、子どもたちが戻る予定はない。
老後の資金を確保するためマイホームを売りたいけれど、引っ越すのは大変。
住宅ローンがまだ残っていてこの先完済できるか心配。
こうした老後資金と住まいによくある悩みを一気に解決してくれるのが「リバースモーゲージ」です。
リバースモーゲージのしくみは、マイホームの土地や建物を担保に銀行が融資をおこなうというもの。
ただ、不動産ローンと大きく異なるのは返済は亡くなってから遺族が売却手続きをして一括返済をする点にあります。
たとえば、もし契約時に不動産に対する借入限度額が2,500万円だったとします。
死亡するまでに限度額の2,500万円まで融資を受け、遺族が土地や建物を3,500万円で売却したとすると、2,000万円を借入金の返済に、残りの1,500万円を遺族は相続することができます。
リバースモーゲージの問題点
借り入れをした自分たちは返済しなくてもいいため魅力的に映るものの、問題点もあります。
まず、契約するときにイメージしていたより長生きした場合、借入限度額いっぱいまで融資を受けると生活費がそれ以上借り入れできなくなり生活に困窮するリスクがあります。
また、死亡後の不動産売却時、地価が大幅に下落すれば担保の土地や建物だけで返済することができず、遺族が不足分を負担しなければなりません。
このように、一見理想的なマイホームの老後活用に見えるリバースモーゲージですが、慎重に検討する必要があります。
快適に暮らせる老後の住まいをイメージしておこう
最近は40代、早ければ30代から老後の住まいに対するイメージを膨らませておくことが必要な時代に入っています。
高齢になっても暮らしやすい住まいとは何か。老後資金を確保するために話題のリバースモーゲージを検討材料に話し合っておくことが大切です。