①韓国訪日客、9月、58%減
日韓関係の悪化が、日本の地域経済に影を落としている。韓国からの訪日客が、9月、大幅に減少しました。日本政府観光局が、10月16日に発表した9月の訪日客数は、韓国が前年同月比58.1%減の20万1200人でした。昨年の9月は北海道地震・台風による関西空港の閉鎖が原因で減っていましたが、今回はその水準を大きく下回ります。この先、10月から11月の予約も、大幅に減少している模様です。政府が掲げる2020年に訪日客4000万人の目標には逆風です。
韓国からの訪日客は、2018年に全体の24%を占め、27%の中国に次ぐ2位でした。韓国からの訪日客が多かった地域には、困惑が広がっています。代表的な地域は、福岡市です。福岡市の博多港と韓国・釜山港を結ぶ高速船「ビートル」は、日韓対立が深まった7月の利用者は、前年同月比2割減でしたが、9月には、同7割減まで減少しているようで、運行するJR九州高速船によると「回復の兆しは全く見えない」とのことです。
直近、日韓首脳が会話する機会もありましたが、日韓関係回復のメドは立っていません。早期に解決するには、やはり、米国の仲裁が必要なのでしょうか。
②在留外国人、最多282万人
10月25日、出入国在留管理庁が、2019年6月末時点の在留外国人数を発表しました。それによると、2018年末比3.6%増の282万9416人になりました。これは過去最高です。2012年末から7年連続の増加となり、日本社会における外国人の存在感は高まっています。
在留外国人とは、3か月以下の短期滞在者を含まず、永住者・中長期在留者・留学生を指します。前述の数字は、日本の総人口の2.24%を占めています。在留資格別の内訳をみると、永住者が78万3513人と最も多く、次いで技能実習が36万7709人、留学生が33万6847人となりました。
国籍別では、中国が78万6241人と最も多く、全体の27.8%を占めました。韓国が45万1543人、ベトナムの37万1755人と続きます。
外国人受け入れ拡大をめざす政府の政策は、実際の成果に結びつく反面、思惑通りに進んでいない面もあります。それは、外国人の大都市圏への偏在です。
都道府県別で、在留外国人が最も多いのは、東京都の58万1446人です。次いで愛知県27万2855人、大阪府24万7184人、神奈川県22万8029人と、4都府県で全体の47%を占めています。
政府にとって外国人労働者の受け入れ拡大の一つの目的は、人手不足の地方の活性化にあります。2019年6月には総合的対応策をさらに充実させ、地方に住む外国人向けの住宅紹介や家賃補助への財政支援などを盛り込みました。
日本人でも大都市への集中は進んでいます。総務省の「人口移動報告」によれば、2018年1年間で、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で13万9868人の転入超過となっています。
政府は「地方創生」を看板政策に掲げ、人手不足に悩む地方の活性化に取り組んでいます。今後は、日本人と外国人双方で一極集中の解決策が、大きな課題としてあります。
③トヨタとソフトバンク、決算明暗
11月6日、7日、ソフトバンクG、トヨタが相次いで決算発表を行いました。内容は明暗を分ける結果となりました。
まず、ソフトバンクG。2019年7~9月期の連結決算、最終損益が7001億円の赤字となりました。同社の四半期決算では過去最大の赤字です。
原因は、シェアオフィス、ウィーワーク関連の損失が、本体で約5000億円、ファンドで約3600億円発生したこと、ファンド事業の営業損益が9702億円になったことです。10兆円を運用する「ビジョン・ファンド」、2017年に立ち上げて四半期で初の赤字を計上しました。
孫正義社長は、「反省はしたが、委縮はしない」と今後も投資拡大の姿勢を示しています。今後は、投資先企業にガバナンスと収益性を追求し、AI革命を実現して欲しいと思います。
一方、トヨタは、世界の自動車市場が落ち込む逆風下において、最高益を更新しました。
11月7日に発表した2019年4~9月期決算では、純利益が1兆2749億円、前年同期比3%増となりました。売上高は、15兆2855億円・銅4%増、営業利益は、1兆4043億円・銅11%増です。また、世界での販売台数は、3%増の545万台と、こちらも過去最高。日本、欧州、中国での販売増がけん引しました。
この堅調さを支えたのが、相次ぐ新モデルの投入です。トヨタは、2021年までに20近い新モデルを投入し、「世界販売の6割を新型車に切り替える」計画だそうです。
2020年3月期の通期業績予想、純利益は14%増の2兆1500億円を据え置きました。 下期も、厳しい環境が続きますが、恐らく、予想を上回る結果を出してくれると期待します。
④世界株高、色濃い選別
11月5日、東京市場で、日経平均株価が23000円台を回復しました。2018年10月以来、ほぼ1年1カ月ぶりのことです。この要因は、11月4日の米国株市場でダウ工業株30種平均が3か月半ぶりに史上最高値を更新し、投資家がリスク選好を摘めたことと米中貿易交渉が進展するとの期待が高まったことです。
世界市場を見渡すと、投資対象と国別の上昇幅に大きな差が出ています。投資対象は、デジタル化で成長するITや堅調な消費市場の勝ち組に資金が集中しています。また、国別では、中国・韓国の株価の戻りの鈍さが目立っています。
IT株は、18年半ばまで市場をけん引していましたが、米フェイスブックの個人情報流用問題をきっかけに人気が陰っていました。今年は、クラウド事業やAIスピーカーなどで稼ぐ力が再評価され、GAFA4社の19年の純利益は合計1171億ドル(約13兆円)と5年前の約2倍の見通しです。世界経済の成長力が落ち外部環境に左右されず稼げるITに投資マネーが集中しています。
もう一つの柱が、貿易が減少し、製造業が不振に陥る中でも堅調さを保つ消費市場で伸びる企業群であります。米マスターカード、仏LVMHモエヘネシーなどが代表格です。
国別では、ITの多い米国株が史上最高値ゾーンにあり、全体の時価総額は35.9兆ドルで世界の時価総額全体の42.4%を占めます。一方、日本株は、昨年、10月につけた高値の24270円に僅かに届いていません。中国株、香港株は、18年の高値から1割以上下回っていますし、韓国株に至っては、高値からの下落率は2割に近い状態です。米中摩擦や地政学リスクによる投資家の選別が強まっています。
今後は、米中貿易交渉の早期決着に期待し、小幅調整を入れつつ、息の長い上昇相場が 続くことに期待します。