つみたてNISA対象商品の条件には、長期投資のポイントが凝縮されている
元々、何千種類とあるファンドの中から金融庁が認めたつみたてNISA対象商品(ETF含む)は、現在148本(※2018年4月時点の届出数)あります。
金融庁が認める条件は「長期投資・分散投資に適している一定の投資信託であること」となっていますが、どのような条件が長期投資に適しているのか、金融庁の条件で重要なポイントをわかりやすくまとめてみました。
<長期投資に適した条件>
・積立型であること
コツコツ積み立てることでリスクを分散できる(ドル・コスト平均法を用いた長期投資の手法)
・再投資できること
投資で出た利益も再投資することで複利効果が大きく働き、長期的に見たトータルリターンが有利になる
・手数料が安いこと
投資信託にかかる各種コスト(販売手数料や信託報酬)が安ければ安いほどトータルリターンが有利になる
・投資信託の信託契約期間が無期限もしくは長期間であること
20年以上の長期間積み立て可能な商品であることが前提になっている
長期間積み立ての回数を重ねることでリスクを分散し、再投資することで複利効果を最大にし、手数料の安さでトータルリターンをできるだけ有利にすること。
どれも長期投資をするうえで非常に重要なポイントであり、投資信託をする人は絶対に知っておきたい知識といえます。
つみたてNISAに限らず、現行のNISAやiDeCo、企業型401Kで投資信託のファンドを選ぶ人はこの条件を長期投資の基準として参考にするようにしましょう。
つみたてNISAで投資初心者におすすめのファンドとは
長期投資の重要なポイントを理解したうえで、次は具体的なファンド選びのポイントをご紹介します。
初めてファンドを選ぶとき、ついつい証券会社の売れ筋ランキングや運用成績の良いファンドなどを見てしまう人も多いと思いますが、売れ筋ランキングや運用成績は変わりやすいものです。
ランキングや成績が変わるたびにころころと積み立てするファンドを変えて売買を繰り返してしまうのは長期投資とは言えません。
長期投資のポイントは、長期間積み立てし続ける(保有し続ける)こと。長期間積み立てを続けないと複利効果を享受できず、トータルリターンに影響を及ぼします。
長期間積み立てを続けることを前提に、初心者におすすめしたいのは「インデックスファンド」の「バランスファンド」で国際分散投資を行う方法です。
インデックスファンド
あの有名な投資家、ウォーレン・バフェットが資産を増やす確実な投資法として推奨した手法が「インデックス運用」です。
インデックス運用とは、目安となる指数(インデックス)に連動して運用する手法のこと。これに対しアクティブ運用とは、市場平均の指数より大きな成果を目指して運用する手法のことです。
これを聞くとアクティブ運用の方が儲かるのでは?と思う人もいるでしょう。
しかし、アクティブ運用は市場調査などファンドマネージャーの手間がかかる運用手法のため、インデックス運用に比べて手数料が割高になってしまうというデメリットがあります。
長期投資を行ううえで手数料の差がリターンに影響をもたらすことは前述したとおりですので、つみたてNISAの対象ファンドでも8割以上がインデックス運用の「インデックスファンド」になっているのは、手数料差によるところが大きいといえるでしょう。
国際分散投資
インデックスファンドにもさまざまな種類があります。ベンチマークとする指数が日経平均やTOPIXなど日本株式に連動するものもあれば、外国株式の指数に連動するものもあります。
長期投資において大切なポイントは、どの指数(資産)に連動させるのかではなく、複数の指数(資産)を持つことで国際分散投資をするということです。
長期投資を始める人は、リスクを減らし安定的なリターンを求めたいという思いがあるはずです。そのためには複数の資産に分散して投資することが大切なのです。
<国際分散投資:国内外の複数の資産に分けて投資することでリスクを分散する>
・日本株式
・日本債券
・外国株式(先進国+新興国)
・外国債券(先進国+新興国)
これらの資産はそれぞれ異なる値動きをすることが多く、日本株式がマイナスのときは、外国債券がプラスの動きをすることでお互いを補完しあいます。
違う値動きの物同士を持つことでリスクを薄めて、トータルで安定的な値動きを期待できるようになるのです。
バランスファンド
インデックスファンドで国際分散投資するためには、前述した4資産それぞれの指数に連動するファンドを組み合わせて購入しなければいけません。
これがいわゆる「ポートフォリオを組む」ということなのですが、ポートフォリオを組む際にはその組み合わせ比率(アセットアロケーション)をどうするかも考えなければいけず、投資初心者には結構大変な作業です。
そこで初心者におすすめなのが「グローバル型のバランスファンド」です。
バランスファンドとは、あらかじめ複数の資産に分散投資できるようになっている、いわばパッケージ商品。
その中でもグローバル型のバランスファンドは、1本持つだけで国内外の資産に分散投資ができるので、初心者が始めに試しやすいタイプのファンドといえます。
ただ、バランスファンドは一つの資産で成り立つファンドと比べ、長期的に見たときの保有コストが高くなりがちです。
グローバル型のバランスファンドから始めて、ある程度投資に慣れてきたところで複数のファンドを組み合わせる方法に移行するのがおすすめです。
バランスファンドを選ぶときに見ておきたいポイントとは
グローバル型のバランスファンドは、ファンドマネージャーが最適と思われる資産比率で運用をしてくれているため、リバランス(資産の再配分)と呼ばれる調整などが不要で、1本持つだけで国際分散投資ができる手軽さが魅力です。
ただ、一口にバランスファンドといっても種類がさまざまですので、その中でも優良ファンドを見極めるポイントを列挙します。
<インデックス型のグローバル型バランスファンドを選ぶポイント>
・資産配分:各資産の割合はどうなっているのか?国内外の資産に投資できているか?
その割合になっている理由もチェックしておくこと
・純資産総額:純資産総額が順調に増えているかどうか?
成績が順調で勢いのあるファンドは右肩上がりに資産総額が増えている
・運用成績:過去のリスク・リターンはどのくらい?
直近1か月など短期間の運用成績を見ても意味がない。長期投資にふさわしいか見るためにはファンド設定日から10年以上経過しているのが好ましい
・手数料:信託報酬額はどうなっているのか?
バランスファンドは少々割高だが、できるだけ低いものを選ぼう
もちろん、ここ数年で設定されたファンドの中にも優良ファンドはあると思います。
しかし、投資初心者が安心して1本のバランスファンドに積み立て投資するには、過去の実績がどれくらいあるかを見ることで精神的な余裕が変わってきます。
ファンド設定後10年以上、資産総額は100億円以上で右肩上がりに資産が増えており、安定的に収益を上げているグローバル型バランスファンド。
これくらい条件を硬く絞っておけば、投資初心者でも気持ちに余裕を持って投資を始められるのではないでしょうか。
まとめ
つみたてNISAで投資するファンドを決めたら、あとは毎月コツコツ投資を続けること、そして年に何回か状況をチェックするくらいで普段通りの日常を送るのがおすすめです。
バランスファンドであれば定期的なリバランスも不要なので、積み立ての設定さえすればまさに「ほったらかし」の資産形成が可能になるのです。
始めのうちは基準価額の推移やリターンが気になってしまうかもしれませんが、長期投資のリターンは短期間の運用成果で評価できるものではありません。
長期投資において、資産の推移に一喜一憂して投資をやめてしまうことこそリスクと言えます。
まずは長期でコツコツ、時間を味方につけるために積み立てを継続することから始めましょう。