2019年の改正のポイント
ではさっそく、今回の相続法の改正のポイントをご紹介します。
配偶者居住権(新制度)
2019年の改正で今後の相続のあり方を大きく変える可能性のある重要な制度が新設されました。
相続人となった配偶者本人が亡くなるまで、自宅にそのまま住み続けることができる権利です。
これまでの相続法では配偶者に2分の1、子に2分の1と決められていました。
ただ、相続財産に自宅が含まれている場合、最終的に遺産の分割を解決するにはそれまで住み続けていた土地や家屋を処分して現金で分配しなければなりません。
もし配偶者が高齢となっていても、遺産相続のために自宅を離れなければならなかったのです。
そこで、高齢者の相続人に配慮して、相続開始した時に居住していた建物であれば、自分が死亡するまで無償で使用収益できる権利が新設されました。
つまり死ぬまでマイホームに住み続けられるようになったというわけです。なお、配偶者居住権を利用するときは不動産の登記も行う必要があります。
歳を取ってから引っ越しするのは、高齢者にとって大きな負担となることが多いものです。改正相続法が高齢化社会に対応したものであることがわかります。
配偶者短期居住権(新制度)
配偶者居住権の短期バージョンです。最低6ヶ月間、今まで住んでいた家にそのまま無償で住み続けることができます。
相続の手続きが進む間、高齢者となっている配偶者の住まいを失うことがないように配慮されました。
特別寄与者(新制度)
亡くなった義理の親を長年にわたって介護していたような場合に、相続のようなイメージで金銭の支払いを請求できる権利が新設されました。
よくあるケースは、嫁が夫の老親の介護や世話をしていた場合です。
親族であっても相続法上はお嫁さんは相続することができませんが、これでは不公平ではないかという以前からの議論を形にしたものです。
従来、相続人でなければ、どんなに亡くなった人の介護や世話をしても相続分や寄与分が認められませんでした。
だからといって、相続人である配偶者や子がお嫁さんに相続財産から金銭を渡すかといえば法的にはそうなってはいません。
例に挙げた義親の介護をしたお嫁さんのような親族を特別寄与者に当てはめて、相続したもうひとりの義親や夫、その兄弟に金銭を支払うように請求できるようになったことが画期的です。
自筆証書遺言
遺言書を自分で作成する場合、現状は自筆ですべて書く必要があります。
ただ、遺産となる財産が多いような人は、土地や家屋の不動産表示から金融機関の預金口座の指示まですべて手書きするのはとても大変です。書き間違いや書き漏れの可能性も高くなります。
そこで、自筆証書遺言のうち相続財産の目録については自筆でなくてもOKとなります。
ただし、それ以外の遺言書の内容は、今まで通りすべて自書しなければならないので注意が必要です。
終活やエンディングノートがブームになる中、自分が亡くなった後の家族のために遺言書を残しておこう考える人が増えています。
今回の改正によって遺言書作成の手間が少し省けるようになるでしょう。また、自筆証書遺言を法務省が預かるという制度が新設されます。
紙とペンさえあれば自分でお金もかけずに何度でも書き直すことができるのが自筆証書遺言がメリットですが、一方で「死後に家族が見つけられないかもしれない」「前もって子に知らせておくと、改ざんされるのが心配」といった心配がありました。
そこで、法務省保管制度によってこうした自筆証書遺言を保管する際の不安をなくすように配慮されます。
ただし、公証役場による公正証書遺言とはちがって、遺言内容を保証するものではありません。あくまで法務省は預かった自筆証書遺言を預かるだけという点に注意です。
高齢化社会に対応した相続法に期待
このように、2019年からスタートする改正相続法によって、高齢者の配偶者への配慮が進み、いまの社会に対応した相続ができるようになります。
また、自筆証書遺言の作成が楽になれば、遺言を残しておこうという人も増えるのではないでしょうか。相続法の改正まであと1年を切りました。
親として子として、家族の今後のことを一度話し合ってみてはいかがでしょうか。
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