資本主義社会における適切な課税制度
税金の課税方法には累進課税と逆進税があります。この2つの違いについて理解しておきましょう。また、資本主義社会におけるバランスのとれた税制の重要性についても解説します。
累進課税と逆進税
課税方法には、税負担の考え方の違いにより2つの種類があります。1つ目は、高所得者ほど適用税率が上がり、税負担が重くなる累進課税。
2つ目は、所得にかかわらず一律の税率が課されるため所得が低い人ほど税負担が重くなる逆進税です。消費税のように所得に関わらず税率を一律にすれば実質的に低所得者の負担が増加し逆進税になります。
年収が1,000万円の人と100万円の人がいる場合、税率が同じであれば手取りとして残る割合は同じです。しかし、手取り額には大きな差が生まれることになります。
そのため、どの税金も一律同じ税率が適用される逆進税の課税方式にすると富裕層に有利になり、貧富の差が拡大してしまうでしょう。
累進課税を採用すると、所得の再分配が可能になり国民生活水準を平準化できるメリットがあります。
資本主義社会ではバランスのとれた税制が重要
資本主義社会においては、所得が多い人もいれば少ない人もいて、さまざまな生活レベルの人が混在しています。
国民全員が完全に平等という状態を実現するのは現実問題として難しいでしょう。そのため、税制もさまざまな所得の人を想定して設計する必要があります。
資本主義社会においては、逆進税と累進課税のバランスをとることが大切です。日本では、所得税と相続税、贈与税などで累進課税が採用されています。
累進課税で富裕層の負担は増加傾向に
累進課税は所得再分配による国民生活水準の平準化という目的があって導入されています。しかし、デメリットもあります。
賃金が上昇しても手取りがそれほど増えず労働意欲低下
2017年の所得税・住民税合わせた最高税率は55%です。高所得者の場合でもすべての所得に対して55%の税金がかかるわけではありませんが、それでもかなりの税負担を強いられることになります。
国税庁の「民間給与実態統計調査(2014年)」によると、年収1,000万円を超える高所得者の割合は4.1%、所得税負担割合は49.1%となっています。
約4%の人が所得税の約半分を負担しているということです。一生懸命働いて稼いでも税金で半分持っていかれるのであれば、働くのをやめようと考える人も出てくるでしょう。
高い税率は仕事に対するモチベーションを下げてしまうことがデメリットです。
富裕層のキャピタルフライト
累進課税のもうひとつのデメリットは富裕層のキャピタルフライトにつながることです。キャピタルフライトとは、税率が低いタックスヘイブンなどの国外に資産を移してしまうことです。
また、高所得者本人も高額の税負担を嫌って海外に拠点を移してしまうことがあります。
キャプタルフライトや人材流出の進行は、日本経済や産業構造に悪影響を及ぼす可能性がある点が累進課税のデメリットです。
高所得者に対する税負担は、税制改正などによって増加傾向が続いており、キャピタルフライトなどの進行が懸念されています。
多額の所得は分散によって節税対策に
納税は憲法に定められた義務です。しかし、税金を余分に払う必要はなく節税できる部分はしっかり節税する必要があります。
節税対策の基礎知識
税法が認める節税にはさまざまな方法があります。自営業ができる節税対策としては、所得を分散する方法が有効です。
たとえば、事業収入2,000万円がすべて本人1人だけのものだとすると、所得税は約520万円となります。
一方、本人と配偶者で半分ずつの1,000万円の収入にした場合は、2人合わせても所得税が350万円で済み、170万円も節税できます。この場合は、配偶者が実際に事業に関与していることが前提となります。
また、会社員の場合は、生命保険料控除や扶養控除、医療費控除などの所得控除をもれなく活用したり、給与所得を圧縮できる効果がある特定支出控除を適用したりするなど、さまざまな控除制度を賢く活用することで節税できます。
節税対策の必要性
税負担能力がある高所得者や富裕層の税負担を増やし、所得の少ない人に分配する政策には一定の合理性があります。
しかし、稼げば稼ぐほど多くの税金を支払う必要があることに対して悲しさを感じる人もいるでしょう。
大切なことは、税法が認めている節税をできる限り行うことです。所得の分散などはすぐにでも対応できます。税制を理解するだけでなく節税対策にも注意を向ける必要があるでしょう。
支出を抑えるためにも節税への意識を高めよう
個人の所得に対する課税方法は超過累進課税で、所得が多ければ多いほど税負担が重くなる仕組みになっています。そのため、所得が多い人は納税資金の確保が必要です。
税負担を減らすためには、所得の分散や各種控除制度を利用して節税することが大切になるでしょう。
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